「富士酢」
ソレイユのピクルス等に使っている富士酢の作り手、京丹後の飯尾醸造の5代目当主のお話を聞ける機会を得、行ってきました。
飯尾醸造は、高度成長期の昭和37年から2年かけ、昭和39年から無農薬のお米でお酢を作る事を始めました。
その頃 稲刈りが終わって、農薬が散布されると 立ち入り禁止の赤い棒が立ち、子供達も入らないよう注意されたそうです。
祖父の輝之助さんが、「こんな田んぼで作った米では体がおかしくなるんとちゃうか」「無農薬のお米 作ってくれんか?」と農家さんを口説き 実現にこぎ着けたそうです。
なるべく、生活排水や他の田んぼの農薬が入らない標高の高い棚田を選び、飯尾醸造の蔵の目の前の海で、捕った魚を山の上に運んで、奥さんの信頼を得て 作ってもらったエピソードも披露していただきました。
無農薬で作る為に色々な農法を試したそうです。除草が一番大変。
*ビニールマルチ 収穫後にビニールを片付けるのが大変。
*ヤシガラ活性炭を粉にした物を蒔き、太陽光が入るのを妨げ、雑草が生えない様にする。
平地だと2ヶ月くらい持つそうですが、棚田なので、1週間くらいで流れて行ってしまう。
*一回 大失敗の農法もあって、ためしてくれた1農家の生活を保障する為に 保証金を払ったこともある。
で、今は紙マルチだそうです。これは、2ヶ月くらいでなくなってしまうので、その後の除草はまた 大変なのですが、、、、と苦笑していました。
しかも、棚田なので、畦や土手の草刈りが大変。(富士酢のパンフレットの一番後ろのページに男性6人が草刈り機を手にしている写真があるのですが、一番右が5代目です)
苗も自分たちで育てます。(農協は薬剤を使って消毒してあるので、買いません。)
現在 契約農家は15軒で、お米の買い取り価格は農協の3倍、¥28000~29000/1俵 60kg。
コストダウン(農家さんの手元に残るお金が多い)を計る為に、紙マルチを敷きながら田植えをする機械を飯尾醸造で購入し、貸し出します。また 紙マルチも買って 配ります。
(もちろん、若手で、機械や紙マルチを自分で購入し、創意工夫をしている農家さんもいます)
棚田は標高400mで、限界集落にあるので、作業が大変な上に、猪被害や集落維持の為の稲作以外の仕事も多い。
15年前(2000年頃)高齢化が深刻になり、14年前から 蔵人から2人がお米作りに携わっている。
彼らはこの時期 醸造所に出勤せず、田んぼで働く。草刈りなどは、日を決めて 社員総出で行う。(社員はパート、家族を含め、20数名)
その他にも(?)自社棚田があり、ここは小さくて 機械が入らないので、手植えしている。(契約農家が20町歩 20haのうち、4%程度の5反)
微々たる物だが、8年前から 田植え、稲刈り、はさがけ体験を募集し、2014年は5月の2週末で、120人程来てくれる。(半分が東京から)
参加してくれた人には お米を半額で分けたり、手ぬぐいを配り、4回目は非売品のTシャツ。(このTシャツの人達をまんべんなく配置しておくと 始めての人に教えてくれるので 更に良い)
お弁当は、棚田の更に上の「ペンション自給自足」の手作り、これを楽しみに参加する人も多い。ここは、標高500mで、3m50の雪が降るので、ビニールを外してあるビニールハウスでも骨組みがひしゃげたりする。
FBやブログで ファッションショーも公開し、優秀者には お米、非売品の酢などをプレゼントする。
ここからが、お酢造り(米作り→酒造り→お酢造り)(作る=こしらえる。造る=大規模な構造物、醸造品をこしらえる)
ぶどう→ワイン→ワインヴィネガー、りんご→シードル→リンゴ酢、大麦→ビール?→モルトヴィネガー、だから、米→日本酒→米酢 お〜〜、納得。
米:無農薬、有機栽培は当たり前と考え、もうあまり言わないが、地元丹後のお米にこだわる。
祖父も父も 1人で豊かになるのはだめ、みんなで豊かになる と言っていた。
麹用に酒米の「五百万石」を20%、残りは「こしひかり」を作ってもらっている。
有機肥料、大豆かす等を使い、消毒に富士酢の黒酢を薄めて散布、雨水、川水のみで 耕作。
酢を造るのに、2年かかるので、豊作の年にお酒にして ストックする。豊作の年が続けば、富士酢のお米として 売りに出す。
過去に2年 台風で被害が出たり、ストックしていた3トンの米に水がかぶったりで、大地を通して、茨城、栃木(J ラップ)の米を使った。
酒:日本で唯一 酒蔵を持っているお酢屋。1〜3月に仕込む。杜氏が外部から来る訳ではなく、蔵人みんなで酒造り。
精米→1晩浸水→蒸す→冷して、麹菌→蒸し暑い麹室で何度もほぐす→酒母→もろみ(酒)→貯蔵(酒税法で、飲む事は出来ない、酢を混ぜて貯蔵)もちろん 味見程度はあり。
<一般のお酢屋>
麹(他から買う)→甘酒→絞って酒(他から買う事も可能)→アルコール添加→発酵→酢
1日で お酢が出来、酸度20%まで 上げる事が可能。安価でマヨネーズ、ドレッシングが出来る。
消毒に使えるので、1本 常備しておくといい。
<醸造用アルコール> 日本酒では 香り、量の為に入れるが、お酢では発酵の為。
酢:もろみ(酒)<1ℓ>に水、種となる酢<3ℓになる>を温め、酢酸菌(創業当時から使っている)を表面に浮かべる→4〜5日で 表面に白い膜が張る。
→100〜150日 静置発酵させ(古式製法)→250〜300日寝かせて、熟成させる。酸度は、5〜8%。
米から酢になるのに 2年かかる。
酢酸菌は、次に造る樽に移して行く。(A4版程度の容器で すくうようだ)(画像では、湯葉の様に見えるが、漬け物の膜みたい)
<他との違い>
*地元 丹後産のみのお米にこだわる。(例外2年)
*赤富士酢は、農協が決める5倍の米を、青プレミアムは8倍の米を使って、旨味を出している。
*古式製法で、一般の100倍の時間をかけている。
麹菌:<麹菌と酵母菌、両方使って、酒を造る>
酵母菌:甘党。糖をアルコールに変える。<酒母を造る時に加える>
酢酸菌:酒好き。低いアルコール度数が好き。<酒→酢>
以下、wikipediaより。(ますます 長くなる)
麹、糀(こうじ)とは、米、麦、大豆などの穀物にコウジカビなどの食品発酵に有効なカビを中心にした微生物を繁殖させたものである。コウジカビは、増殖するために菌糸の先端からデンプンやタンパク質などを分解する様々な酵素を生産・放出し、培地である蒸米や蒸麦のデンプンやタンパク質を分解し、生成するグルコースやアミノ酸を栄養源として増殖する。コウジカビの産生した各種分解酵素の作用を利用して日本酒、味噌、食酢、漬物、醤油、焼酎、泡盛など、発酵食品を製造するときに用いる[1]
酵母(こうぼ)またはイースト(英語:yeast)は、広義には生活環の一定期間において栄養体が単細胞性を示す真菌類の総称である。より一般的には食品などに用いられて馴染みのある出芽酵母の一種サッカロマイセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を指す。酵母は正式な分類群の名ではなく、いわば生活型を示す名称であり、系統的に異なる種を含んでいる。発酵に用いられるなど工業的に重要であり、遺伝子工学の主要な研究対象の1つでもある。明治時代にビール製法が輸入されたときに、yeast の訳として発酵の源を意味する字が当てられたのが語源であるが、微生物学の発展とともにその意味するところが拡大していった。
さてここから、使い方。
*まずは 富士酢の商品「ピクル酢」 ECOな原材料(ローリエは静岡、黒胡椒はスリランカの無農薬有機)
ドライトマトを煮出し、出汁を摂っている。(グルタミン酸は、トマト 玉葱が多い。)
家庭ゴミの40%は食べられる。これをフードロスという。
残った野菜を漬け、更にその漬け汁を他の料理(ポトフ、付け焼き鶏)に使っていく。(素晴らしいですね)
*使い方 8項目
1減塩 2臭み消し 3甘みの抑制 4苦みの抑制 5殺菌、防腐 6発色、漂白 7味のバランスを整える 8食感を出す
1 醤油の塩分16%〜、減塩醤油11%(厚生省的には醤油の半分)、ポン酢5〜6% ポン酢を倍使っても塩分量は少ない。
酸味を加える事で、塩味が際立つ。(感じる様になる)
2 青魚の酢締め。焼き魚にさっと酢を塗り、5〜10分置いてから 焼くと、皮崩れが少ない。
青魚の生臭さは、アルカリ性物質(アミン)が増えるため 強くなる。→酢を塗ると中和される。
3 甘みが強いとき 加えると抑制する。
4 苦瓜 酢水にさらすと、苦みを押さえると同時に、ヴィタミンB,Cの流失が少ない。
5 米3合に小1の酢を加えると腐りにくい。煮物、常備菜にも わからない程度に酢を入れるといい。
6 俎板の消毒出来ます。しかし、水道のステンレスなどが錆びるので、きちっと洗い流す事。
7 麺つゆ 都内の有名蕎麦店は大体 麺つゆに酢を忍ばせている(酸味がわからない程度に入れる)→味に奥行きが出る。
知り合いが昆布など海草類を煮る時、酢を入れます。柔らかく煮えるからだそうです。
8 じゃが芋 線切りにして、酢で和える。(ペクチンの流失を防ぐ)炒めるとシャキシャキに仕上がる。
ガリ 今の新生姜をすし酢で漬けるといい。
(生姜のぬか漬け 固まりを10日くらい漬ける。試したい。大地に注文しよう。)
女性は生理というシステムで鉄分を体から排出しているので、長生きするというが、閉経すると
コレステロール値が上がる。お酢はコレステロール値を下げる作用がある。
血圧も正常値に戻す。
血糖値も上がる事を抑えられる。
しかし、1週間 お酢を摂らないと元に戻ってしまう。
そして、割らないと胃に穴があいてしまったりするので、7〜8倍で薄めて飲むことをお勧めする。
人は、弱酸性を美味しいと感じる。
*最後にプレミアムの由来
父の時代から 匂いが苦手な人が多く、どうにかしたいと思った。
父が5代目当主(息子)が小学生の頃から 希望して、東京農大の香りの先生 柳田先生のゼミに入る事を熱望した。
国公立理系が希望だったが、色々あり、柳田ゼミに入った。
菌を変えるか、米を増やすかの 選択だった。→米を増やして、他の要素を増す事で、匂いを消した。
親子2代の集大成です。
講演をした5代目当主 飯尾彰造さん(あ、造るだわ)
気負いなど無いのか、将来を父に決められていいのか などなどの質問を淡々と答え、東京でコカコーラに勤めてサラリーマンをしていた事も話し、大体これだけの内容を1時間半でまとめるすごさ、ただ者ではない。
*試飲、ピクルスの試食
ピクルス ぽりぽり 食べられていいです。私は蓮根や牛蒡、南瓜も食べたいので、考えどころ。
市販の酢 鼻につんと来て 飲むのに苦労する感じ。
赤富士酢 奥に米の香りがする、酸はしっかり。
青プレミアム 黄みが濃い色、甘い香りがする、酸の代わりに少し米の味がする。
長々 読んで下さり、ありがとうございました。日本の産物、文化を守りましょう。